#88 作家 浅田次郎

新聞記事より

新人賞の落選は30回、初めて本を出版したのは39歳の時。

ベストセラー作家の浅田次郎氏も、下積み時代を経験した。

今、氏は複数の文学賞の先行委員を務める。一つの賞につき、多くの応募作を読まねばならず、その労苦は並大抵ではない。だが、氏は『この仕事には気合が入る。一行もおろそかにしてはならぬと思う』と。なぜなら『(新人賞を)三十回も落ちたのは何かのまちがいだったと、今でも信じているから』(つばさよつばさ 集英社出版)

仮に氏が”とんとん拍子”で大成していれば、こうした思いは生まれなかったかもしれない。書き手の奮闘に思いをはせつつ、応募作に真剣勝負で向き合う。氏の作品にもまた、日々を懸命に生きる人々への温かなまなざしがある。